哲学部の日常
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「ねぇ、何で私は生きてるのかな?」
 窓に腰掛けている彼女は、そう言ってこちらに振り返る。
「今日はそうきましたか」
 こう呟いていつもの通りに論戦が開始した。
 論争こそが哲学部の第一の活動だ。
 俺は読んでいた本を机の上に置き、イスを回転させ彼女の方向へ向ける。
 それを確認して彼女は言った。
「私は生物が生存しようとしている意義が分からない。それは生きている生物の視点だからよね?」
「ほう?」
 ……哲学部は、とりとめのないことをずっと論争している部活である。よって、部活といえど部員は二人しかいない。
「つまり、第三者の視点からだと何か変わるかも知れない。だから私は生物を超越した第三者(神)になる!!!」
 そう言って彼女は、ビシッと天井を指差した。俺はバレないように溜息をつく。
 彼女の電波っぷりは相変わらず慣れない。
「今回はやけに難しいな」
「当然よ。神に関する論争はいつも堂々巡りで結論なんか無い。まぁ、仕方ないけどね。さぁ、話を再開するわよ!」
 彼女は俺に向かい合うように椅子に座る。夕日を背にしたその姿は、ちょっと神々しくも見えなくもない。
 ……まぁ、神も電波も理解できない物としては一緒なのだが。
「へいへい」
 改めて腕を組み、返答した。
「じゃあさ、聞くけど、山の中とか滝とかで修行するつもり? 意味だけを探しながらお前の一生を費やして良いのか?」
「え、えと……」
 この反応、よし手応えアリ。よし、と小さく呟いて拳を握りしめる。
 今回は早く終わった……、ように見えた。
「ふ、不老不死の神になるから大丈夫よ……、人はなるなれないじゃない、なろうと思う気持ちが大切なのよ!」
「誰の格言だ」
 俺のツッコミも空しく論争は明後日の方向へ進んでいく。
 ……まあそれが彼女らしくて、楽しいからここに居るんだろうけどな。
「それで君のターンは終わり?」
「もうそろそろ意味が分かんねぇよ」
 もはやグッダグダになって来たので、一応方向修正をしておく。
「つまり、神になって意味を知りたい。と?」
「そ。あ、言っておくけど方法とか関係のないところに突っ込んで話をそらすのは無しね」
「入部したての頃の話を持ち出さないでくれ、こっちが煙に巻かれる」
 その時は散々はやしたてられて一週間ぐらい事務会話すら出来なかった。電波は危険だ……。
「よし、まとまった」
「おお、どれどれ?」
 彼女は顔を近づけてくる。距離が近くて、彼女の使っているシャンプーの香りがここまで漂ってくる。
 ……気のせいか、心臓の鼓動も早くなっている気がする。
 いやいやいや、論争論争!
 俺は無理矢理思考を論争側に向けて、心を落ち着ける。
「あ、あのさ、人間だから見える景色も、あるんじゃないか?」
「ほう? それはどういう意味かな?」
「ほら、幼稚園児の頃は磁石とかが不思議に見えたけどさ、今になると仕組みも分かって大した事無くなるじゃん?」
「確かにそうだったね……。昔は磁石さえあれば三時間遊べたのにね……」
 彼女は今も昔も変わってないらしい。実に微笑ましい事態である。
 ……そして今少しでも可愛いと思った俺は負けだ。
「中学生の頃は自覚が無くっても『反抗してる』とか、『厨二病』とか言われなかった? そのとき感じた景色、それも思春期にしか見られない景色じゃない?」
 してやったり、という表情で彼女を見ると、少し難しい顔をして
「むむむ……、よく分かんなくなってきたよ……」
 ちょっと言葉遣いが幼いが、確かに難しくしすぎたかも知れない。
「じゃあ簡単にまとめよう。人間だから見える物、感じる物がまだまだあるんじゃないの? えと、まだまだ人間として生きていた方が良いんじゃない? こうやって二人で居られるのも限られてるんだし」
「オッサン臭っ」
「ええ!? いい事言ったつもりなのに……」
 身振り手振りを交えた俺の持論は、たった一言で看破されてしまった……。
 と、言うか彼女にオッサン臭いと言われたことがショックだ。
「ふぅ……、そろそろ疲れたね。お開きにしよう!」
 そう。この哲学部は話がある程度まで煮詰まると部長判断で終わるのだ。
 俺と彼女は二人で下駄箱に向かう。
 ふと彼女を見る。
 彼女は上目遣いでこちらを見てくる。その姿にちょっと可愛さを覚える。と、いうか単純に惹かれる。
 あと何回こうやって並んで歩けるだろうか。
 俺は少し思考を巡らせる。
 哲学部は長期休暇は強制出席じゃない。だから出席日数が一緒にいられる日で、そこから彼女が病気で休む日数を引いて、あ、でも引っ越ししたりとかは……、
 悩み始めたとき、彼女が俺に微笑んだ。

「じゃあさー、一緒に暮らしちゃう?」

 ……

 思考が急停止した。

 これは、彼女なりのプロポーズだろうか? いやいやそれとも、ただの冗談?
 よく分からなくなってきた。

「そうするか。んで、将来は結婚するぞ!」

 そう言って、俺は彼女に抱きついた。

 彼女は、頬を真っ赤に染めながら

「は、早すぎるわよ! バーカ!!」

 そう言って彼女は走り去ってしまった……。

 ――哲学部。
   それはとあるカップルが一緒にいたいと言う理由で作り上げた、
   簡単に言うと常に惚気ている部活なのである。
友達が(ry h8FFQwHkPU

2010年12月31日(金)23時48分 公開
■この作品の著作権は友達が(ryさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
えと、今年最後。と言う訳で弾けてみました!
自分のやりたいことを半分いや、三分の一はやりきった感じです!
ラストも僕なりで。
とにかく、自分らしさを追求した結果です!
今年の分は、もう悔いはないです。
あ、ヒロインの電波が全然目立ってないので、それだけが残念です。

最後に
僕が書いた他の作品にコメしてくれた人がいるのですが、ちょっとリアが重い状況になってメール確認を怠っていて、そのせいで返信が一ヶ月も遅くなってしまった方がおられます。
そちらでもお詫びはしたのですが、出来るだけ目に付いた方が良いと考えたので、この場をお借りして、お詫びを言わせていただきます。


この作品の感想をお寄せください。

2011年01月18日(火)23時34分 友達が(ry h8FFQwHkPU 作者レス
魚さん、ご感想ありがとうございます。

>最後はにやりとして良かったです。
よし、狙い通り。とこちらもニヤリとさせていただきました。

>ただそこにたどり着くまでの議論や展開が落ちも山場もなく終わってしまって残念。
……またやってしまったOTL
前にも言われたんですよ。山場や落ち、起伏がないって。
失敗です。はい。

萌えました? よかったです……。

ありがとうございました

pass
2011年01月18日(火)22時56分 友達が(ry h8FFQwHkPU 作者レス
開蔵さんご感想ありがとうございます。

……えと、最初に電波の観念が多少ずれていたことを先に言っておきます。
あー、言い訳になりますがヤンデレ以外は苦手だー

>「昔は」と言ってるから、変わってるように思いました。
これは僕の電波っ娘の観念に起因しちゃってます。
「今も昔も電波だったんだね……」
という意味を持たせたかったんですけど、遠回しすぎましたかOTL

電力不足……ですか。
電波っ娘にはまだまだ研究が足りませんね。未熟でした。

>これはいっそのこと消してしまったほうが、
早速消させていただきました。
……悔しいですが凄く変わりますね。
推敲の数が足りなかったんでしょうか。

あと、出来てなかった作品全てにレスしておきましたので。
毎回メモらせてもらってます。ありがとうございます。

ありがとうございました。

pass
2011年01月16日(日)16時29分 魚  +10点
最後はにやりとして良かったです。
ただそこにたどり着くまでの議論や展開が落ちも山場もなく終わってしまって残念。

少し萌えたので10点。
127

pass
2011年01月13日(木)01時54分 開蔵  0点
お構いなく!その重みが少しでも友達が(ryさんの糧になることをただ願ってます。

>「確かにそうだったね……。昔は磁石さえあれば三時間遊べたのにね……」
>彼女は今も昔も変わってないらしい。実に微笑ましい事態である。
「昔は」と言ってるから、変わってるように思いました。

>「じゃあさー、一緒に暮らしちゃう?」
彼女は主人公の内面を読んだのでしょうか?主人公が自分の思考を口に出しているような描写はないし、
下駄箱のあの状況から主人公の悩みを彼女ちゃんが推し量るのは少し難しいと思います。
「こうやって二人で居られるのも限られてるんだし」からは遠すぎますから。
いや、電波な彼女は会話の前後とかをやや飛躍するものなのかな、という風にも解釈できました。
しかしその解釈には二次的な手間がかかったこと、そして電波萌えとしてはちょい電力不足の感がある、それらをお伝えします。

>さっき言った通り、
これはいっそのこと消してしまったほうが、その後に続く箇所、残された学生生活への憂愁を強調できると思います。
115

pass
2011年01月02日(日)20時21分 友達が(ry h8FFQwHkPU 作者レス
ご感想ありがとうございます

さっきってあそこですよ、あの……
って削ったの忘れてましたΣ(゜□ ゜)
すみません。

そうですよね……、言い回しが分かりづらいですよね
すみません、やはりもう少し整理できるはずです。

>>それと、病気とか引越しとかの話題はどこで?
欠席の話題を必死で作り出していたのですが、やはりアレですね、『分かりにくい』
大きな目標を教えて下さりありがとうございました。

pass
2011年01月02日(日)05時15分 いも M8vT5jA.U. 0点
とりあえず。
>さっき言った通り、あと何回こうやって並んで歩けるだろうか。
さっき?

>哲学部は長期休暇は強制出席じゃない。だから出席日数が一緒にいられる日で、
>そこから彼女が病気で休む日数を引いて、あ、でも引っ越ししたりとかは……
イミフです・・・と書こうとして、意味がわかった。
長期休暇の間は、哲学部は出席が義務付けられていない、ということか。
分かりにくい。。。
あと、「出席日数が一緒にいられる日」って表現も・・・?
それと、病気とか引越しとかの話題はどこで?

なんか全体として、もうちょいうまい作りに出来たんじゃないかなぁ、と思います。

119

pass
2011年01月01日(土)23時59分 友達が(ry h8FFQwHkPU 作者レス
ご感想ありがとうございます

 そうですね。
 相思相愛がやりたかったので、こうなっちゃいましたね。
 僕もリア充爆発推進派です。安心して下さい。
 ……僕の理想を詰め込んだ作品でもあります。はい。

 ……あ、
 違いますシリーズじゃなくって……
 ってもう遅いか。
 すみません、勘違いさせるような書き方になっていました。
 訂正しておきました。 すみませんでした。


ありがとうございました

pass
2011年01月01日(土)03時06分 折伏ぬゐ 3zzXlUmpzE +10点
はじめまして友達が(ryさん。ぬゐというものです。作品読ませて頂きました。

リア充爆発しろ!と思わず叫びたくなる逸品でした。勝手にイチャついてりゃええやん……と読後ぼやいてしまったのは秘密です。


ところで私、今新しい作品から読み進めてるんですが、コメントを拝見させていただいたところこれはシリーズものなのでしょうか? だとしたら氷山の一角を見て評価してしまうようで申し訳ございません。他の作品にも感想投稿しますのでどうかご勘弁を。

ではでは。
112

pass
合計 4人 20点


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