バカバカバカ哲学ラーメンラーメンゾンビゾンビゾンビ
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 ドッカーン。
 轟音と共に、ラーメン屋は吹き飛んだ。
 黒髪ショートの少女、村上澪(むらかみみお)と、おっちょこちょい男子高校生、ユースケと、二人が腰掛ける丸イスを残して。
 天井も、壁も、一切吹き飛び、戦場さながら、ガレキの山と化したラーメン屋跡に、ぽつんと佇む二人。
「ネギ塩チャーシューメン」と、村上澪。
「注文してんじゃねえよ」と、ユースケ。「周りの状況をよく見ろよ。目いっぱい目蓋をおっぴろげて、注視してみろよ。みんな爆発で吹っ飛んじまって、製麺機もない、寸胴もない、ゲンコツとか鶏ガラとかの材料も一切ない……この惨憺たる状況で、どうやってラーメンを作れと? いや、それ以前にラーメン作る人、誰もいないから。ラーメン屋の店員、みんな爆風に乗って掻き消えちまったから」
「おじさん、餃子一人前」
「追加注文してんじゃねえよ。ていうか、おじさんって誰よ? 何が見えてるんだよ? 怖えよ。何、携帯取り出して心霊写真撮ろうとしてんだよ。そもそも、村上が店を跡形も無く爆破しちまったんだろ」
 村上澪は、その特殊な能力を用いて、彼女の周囲半径10メートルの範囲を爆破することができるのだ。
 実に恐るべき特殊能力だった。
 信じがたいほど特殊で、ありえないほど風変わりで、おどろくほど非常識だった。
「ラーメンを食べるべくラーメン屋に入ったのに、そのラーメン屋を消失させるって、一体どういう展開だよ。どこにどんな脈絡があるっていうんだよ。理不尽だろ。あまりにも、理不尽だろ。オレはこの世に生を受けてから17年が過ぎたけど、ここまで『理不尽』という言葉がジャストフィットする瞬間に出会ったのは、初めてだよ!」
 
 ドッカーン。
 遠くで、第二の爆発音。
「核戦争が始まった」と、村上澪。
「核戦争かよ!」ユースケは核戦争にツッコミを入れながら、丸イスから転げ落ちた。
「そんな日本シリーズのロッテ中日戦が始まりましたみたいなフラットなトーンで核戦争が始まったとか、しれっと言うな! それとツンデレここに極まれりって感じの冷酷無情なポーカーフェイスで、とんでもない非常事態を軽々と口走るな! 核戦争だぞ? 世界の終焉だぞ? 人類滅亡だぞ? オレたち、死んじまうんだぞ?」
「死ね」村上澪は低くつぶやいた。「死ね。みんな死ね」
「はい?」
「血ヘド吐いて死ね。脳ミソまき散らして死ね。臓物に埋もれて死ね。ただの肉片と化し、カラスの群れに心ゆくまでついばまれて死にさらせ」
「もしもし? 村上さん?」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「……あ、あのう……」
「末代まで呪い殺してやる。ウケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
「こわ……」
 そう、呪い殺すことだって出来るのだ。
 村上澪の特殊能力はハンパじゃなかった。
 爆破も出来るし、呪殺もオーケー。
 更に、手を触れることなく念じるだけで、相手の首をねじ曲げることも、目玉をえぐり出すことも、鼻を削ぎ落とすことも、両腕を引きちぎることも、全身の骨を粉々に粉砕することも、頭部を大量の血しぶきと共に吹き飛ばすことも可能だった。
 
 ズズズ……。
 ズズズズズ……。
 背後から聞こえてきた不審な物音に、二人は振り返った。
 村上澪が起こした爆破で、二人以外、その場にいた全員が吹き飛んだはずだったが、そうではなかったようだ。
 ガレキの中に、背を丸め、黙々とラーメンをすする、立派なあご髭をたくわえた欧米系ルックスの老人が、一名。
「ソクラテス」と、村上澪。
「ソクラテスだあ?」ユースケは目を丸くする。
 老人が食していたのは、つけ麺だった。
 麺をスープの器に残らず移し、フィニッシュに向けて、器を抱え込み、口に近づける。
 そして見栄も外聞も無く大きなノイズを響かせながら勢いよく極太麺を吸い上げ、たたみ掛けるように、具材の角切りチャーシュー、メンマ、味付け半熟玉子を胃へ流し込んだ。
 スープが飲み干された器の底には、鰹節や鯖節をぜいたくに使った魚粉が付着している。
 老人は懐からポケットティシューを取り出し、唇を丁寧に拭くと、大きくゲップを吐いた。
 麺一本スープ一滴残さず平らげた老人だったが、その反面、決して満足したようには見えず、むしろその表情は冴えない。
 やがて老人は眉をしかめ、指先でテーブルをとんとんと叩き出し、あからさまに苛立った様子を示し始めた。
 ドンッ。
 苛立ちは頂点に達し、両手を激しくテーブルに叩きつける老人。
 はずみで器が落下し、ガレキの角にぶつかって、散り散りに砕け飛ぶ。
「クソ魚介系とんこつ醤油が……」老人は肩を小刻みに震わせ、圧し殺したような低い声で、吐き捨てるように言った。「魚介系とんこつ醤油、魚介系とんこつ醤油……まったくどいつもこいつも馬鹿の一つ覚えみたいに、魚介系とんこつ醤油だ。とりあえず魚介系とんこつ醤油のつけ麺さえ出しておけば、そこそこ売れて、それなりに人気店となって、うまくいけば雑誌に載って、店主は万々歳だ。クソッたれが。いつも魚介系とんこつ醤油ばっかり食わせおって、さすがにこっちは食い飽きとるわ。大体なんだ、あの大勝軒のアンパンマンみたいな顔をしたオヤジは。あのお人好しが、店でほんの少し修行しただけの輩に気安く暖簾分けするもんだから、あっちこっちに『大勝軒』ができて、中には『これのどこが大勝軒やねん!』みたいな店まで存在しとるじゃないか!」
「あの……」おずおずと、ユースケは老人に言葉をかけた。「あの、ソクラテスさん、ですか?」
「左様」突然老人は威厳のある声を響かせ、イスから立ち上がった。「いかにも我が輩は西洋哲学の祖と目され、人は真理のすべてを知ることはできないことを知るべきという『無知の知』を説き、イデア論でおなじみのプラトン等を弟子に持つ、かの名高き古代ギリシャの大哲学者、ソクラテスであるぞ! ええい頭が高い! 控えおろう!」
「別のキャラになってるし」ユースケはぼそりと呟いて、「でもソクラテスさん、たしか権力者の反感を買って死刑を言い渡され、そのあげく自殺したのでは?」
 ソクラテスの瞳がきらりと光る。
「では訊くが、なぜ我が輩が自殺したと思うのだ?」
「え? そりゃ、本にそう書いてあったから……」
「そうか。では、どうして本に書いてあったことが正しいと思うのだ?」
「そんなの、知識や教養を備えた頭のいい人たちが言ってるんだから、間違いないと思うけど」
「ふむ。ではそう言ってる人たちが知識や教養を備えていると、どうして判るのだ?」
「…………一応、難しい試験をパスして難関大学に入って、優秀な成績を修めてる人たちだから、それだけの知性は持ってるでしょ」
「ほほう。難関大学で優秀な成績を修めると、どうして知性を持っていると断言できる?」
「少なくとも学があることは間違いないだろ」
「学があることは間違いないと言い切る根拠は何だ?」
「質問攻めかよ!」 

 ドッカーン。
 
 ユースケは知らなかった。
 ソクラテスの体内に爆発物が仕掛けられており、その起爆装置が、「質問攻めかよ」というツッコミに反応して発動するということを。
 その瞬間、ラーメン屋跡に残存していた二人の高校生と一人の哲学者の影は、痕跡をとどめることなく消え去った。
 ちょうどその頃、世界の上空を数百の核ミサイルが飛び交い、地球上に存在する数多の人々を、一網打尽に殲滅していた。
 こうして核シェルターに逃げ込んだ一部の富裕層やわずかな強運の持ち主を除き、地球上からヒトは消え失せた。
 
 確かに消え失せた。
 命を失ったという意味において。
 
 命を失ったはずの人間が、むくりと起き上がる。
 一人、また一人、と。
 
 放射線をさんさんと浴び、放射能を大量に含む黒い雨に恵まれ、大地にしみこんだ豊富な放射性物質をいっぱい吸収した死体は、すくすくと育ち、新鮮で良質なゾンビへと姿を変えた。
 元アメリカ、元ロシア、元中国、元北朝鮮、元イラン、元ヨーロッパ……世界中で同時多発的にゾンビたちの生命が芽生え、焦土と化した大地を力強く踏みしめて、一歩一歩前進を始める。
 わずかに生き残った人たちも、なんだかんだで結局ゾンビとなり、増殖に増殖を重ね、ゾンビの群れがうじゃうじゃと世界に溢れ出した。
 こうして地球は完全にゾンビの支配する星へと変貌を遂げ、ゾンビたちは楽しく愉快に、末永く暮らしました。
 
 
 『ゾンビたちの楽園』
 
  おわり
  
「タイトル変わってるじゃねえか!」と、ユースケ。


  マジおわり
エキセントリクウ 

2010年12月31日(金)10時58分 公開
■この作品の著作権はエキセントリクウさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
前作のプロモーションのため、急遽、書き下ろした小品です。

目的は前作「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」の宣伝であり、それ以外の意味はありません。

エキセントリクウが本当に読んでいただきたい、感想を寄せていただきたいのは、

「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」

の方です。

というわけで、

エキセントリクウ作
「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」

をよろしくお願いします!
ていうかマジお願いします!
この通りです(ひれ伏してます)!
すいません!
ホントすいません!

エキセントリクウ作
「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」

を、なにとぞなにとぞなにとぞよろしくお願い致しますううう!!!

「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」に続々と二件寄せられた感想より。

読みやすい文章、魅力的なキャラ、そして、しっかりしたストーリー。三拍子そろったバランスの良い作品ですね。(「虚無の奏でる音楽」野々宮真司様)

主人公が突拍子も無くてテンション高くて、とても魅力的だと思いました。文章も読みやすかったです。完成度が高い。感服いたします。(「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン様)

しつこいようですが、

エキセントリクウ作
「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」

読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ(洗脳式宣伝法)


この作品の感想をお寄せください。

2011年01月25日(火)12時32分 エキセントリクウ  作者レス
真柴竹門さん、感想どうもありがとうございます。
こんなトンデモ作品ですが、これだけの感想を書き込んでいただけると、やはり嬉しいものです。


>これってあれですよね? ラーメンの最後のほうで汁の中に見える黒や白のツブツブ。

お、分かりますか。ということは、真柴竹門さんも「スープは残さず飲み干す派」ですか。私は基本、全部飲みます。
作品では飽きたと言ってますが、また魚介系とんこつ醤油ラーメン、食べてきました。スープにゆずがアクセント的に入ってて、うまかった。
魚粉といえば光麺ですけど、自分でトッピングするスタイルは新鮮でした。
余談ですが、魚粉って最初聞いたとき、魚のウンチのことかと思いました。


>私は哲学面に関して厳しいのです。プロモーションだからといって哲学を疎かにしてませんか? 反省して下さい(怒)。

そんな(怒)んないでくださいよ〜(泣)。
それにしても毒杯とラーメンのスープを重ね合わせるなんて、意外でした。ぜんぜん狙ってません。偶然です(笑)。
ほらまた(笑)に(怒)ってるし〜(泣)。





pass
2011年01月24日(月)01時10分 真柴竹門  +20点
どうも、真柴竹門です。店の手作りハンバーグ弁当をお昼に食べた日に感想を執筆です(醤油だけで煮た白菜が良いアクセント)。コンビニやファーストフードも悪くないけど、こういう温かい味も良いもんですね。美味しかったです。
プロモーション作品、拝読させて頂きました。大変おもしろい取り組みですね。
拙いながらも、その感想をここに記しておきたいと思います。エキセントリクウさんの今後にお役となれば幸いなのですが。
……にしても、このトンデモ作品で真面目に感想を書こうとしている私って場違いにもほどがありますね(笑)。まあ、お笑いの基本は「ズレ」から始まるのですから問題ありません。
というか「礼儀」なんてものは普段から捨ててるのですから肥溜めにでも放り出しちゃいましょう。けれど捨てようにも都会は愚か、田舎ですら肥溜めは廃れてきているので困りました。肥溜め、肥溜めはどこだ?

とにかく全編に渡って強烈なバカが渦巻いております。私は嫌いじゃありません。
特に気に入ったのが……

>スープが飲み干された器の底には、鰹節や鯖節をぜいたくに使った魚粉が付着している。

こん時はさすがに『細けーーーよ!』とツッコんでしまいました(笑)。これってあれですよね? ラーメンの最後のほうで汁の中に見える黒や白のツブツブ。
これが凄く印象的でした。小説って後々忘れ去られるだけに、読者に覚えててもらえるシーンやセリフがあるだけでその小説は成功だ、とどこかで聞いたことがあります。その点からすれば本作は成功していると言えるでしょう。
しかし、気に入りませんね。何故なら哲学が不徹底だからです。
ズバリいいましょう。このソクラテスは偽者ですね。
それは何故か? 本物は自身の哲学を貫くため、毒杯を一滴残らず飲みました。そして死んでいったのです。だというのにこのソクラテスなんか、魚粉を残してしまってるではありませんか。
それが不徹底なのです! いいですか? 本物なら最後の汁を一口すする前に、箸でクルクルとかき混ぜて魚粉を浮かべさせてから、沈殿してしまうより先にグイッと飲み干すはずです。
こうすれば粉末の残りカスまで平らげられます。皿は洗い立ての食器の如く綺麗ピカピカ!
魚粉まで飲み干してこそソクラテスなのですよ。ここは明らかに描写ミス。残念ですが当初は三十点のところを、二十点に引き下げざるを得ません。
私は哲学面に関して厳しいのです。プロモーションだからといって哲学を疎かにしてませんか? 反省して下さい(怒)。

にしてもまた他の所と同じように長文感想してしまいました、すみません。「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」では今度こそコンパクトに書くぞ! テクマクマヤコン、テクマクマヤコン〜♪
けど最近は疲れ気味でしてねえ。十二月から「哲彼」企画の小説やら感想やらで慣れない長文を書いていたせいで、ちとグロッシーなのです。だから肌がテカテカ!(←それをいうならグロッキーだ〔笑〕)。
でもこれからちゃんと「哲学の道で〜」の感想を書きますからね。既に読了済みですし。……うわわ、だから電波を発さないで下さいよ! だからこれから書くんだって!
……うっ、読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ読むぞ(そしていつまで経っても書けない)。
ていうか自作でもこんな感じでギャグを盛り込みたかった……(泣)。
 ポチッ! ジョボボボボ……!
ん? そうか。現代の肥溜めは水洗トイレなのかもしれませんね。
うわあああっ! 「哲学の道で〜」へ自動的に流されていくー! もう読んだのにー!
それでは「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」でお会いしましょうー!
 ジャバーーーッ!

127

pass
2011年01月02日(日)09時55分 エキセントリクウ  作者レス
華は半開さん、感想どうもありがとうございます。

>これのどこが哲学やねん!
哲学になってなくて、すいません。

尚この作品を読むと、自動的に「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」へジャンプしますので、こちらにもツッコミお願いします。


pass
2011年01月02日(日)05時39分 華は半開  0点
このソクラテスさんに突っ込みたい。「貴方から始まった哲学だって、中には『これのどこが哲学やねん!』みたいなもんまで存在しとるじゃないか!」と突っ込みたい。「お前が言うな!」と。
122

pass
2011年01月02日(日)01時04分 エキセントリクウ  作者レス
nさん、感想ありがとうございます。

普段は地味で、ツマラン男です。
作品はその反動ですね。

pass
2011年01月01日(土)21時15分 n 
エキセントリクウさんが面白い方なのだと分かりました。
お友達になりたいです。
126

pass
2011年01月01日(土)18時32分 エキセントリクウ Ggrd4nsElw 作者レス
感想人Xさん、感想ありがとうございます。
また、「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」の方も読んでいただいたそうで、そちらも、ありがとうございます。

作者からのメッセージは、お気づきとは思いますが、ネットショッピングのページのパロディーです。下へスクロールしていくと商品名が何度もくりかえされてて、すごいしつこいんですよね。
通販のテレビ番組とかも、ツッコミどころ満載で、面白いですよね。

pass
2010年12月31日(金)19時21分 感想人X  +30点
エキセントリクウさん、こんにちは! 感想人Xです。
作品拝見しました。■作者からのメッセージ欄込みでこの点数です。筒井康隆氏と通販広告が好きな私にはとても楽しめました。哲学も萌えも十分あると思います。「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」に比べ、こちらの作品のほうがユースケ君が生き生きして見えます。面白い作品を読ませていただき、ありがとうございました。
119

pass
合計 4人 50点


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